許可申請小ネタ

完成工事原価報告書の項目について

更新日:

決算を締めたらそこから4ヶ月以内に許可権者(都道府県庁など)に提出しなければならない決算変更届。(地域によっては「事業年度終了報告」と呼んだりもします。)

 

この書類一式の中に「完成工事原価報告書」という書類があります。

 

これは、当期に完成させた工事について、そこにかかった原価の内訳を示す書類です。
一見すると簡単に見える書類なのですが、その内訳は税理士さん等が作った税務申告用の決算書からはそのまま拾うことがほぼ不可能です。

なぜなら通常、大企業を除く企業は、細かい仕訳について一般管理費と工事原価を明確に区別して記帳する必要がないとされており、そもそも税理士作成の決算報告書が許可業者が提出すべき完成工事原価報告書に対応していないからです。

 

では、完成工事原価報告書のそれぞれの項目は、どういうものを指すのでしょうか。

この記事では基本的なことを説明します。
細かいところを突き詰めていくと人によって変わる部分もあるかと思いますが、ひとまずは当事務所の見解としてご覧下さい。
(工事原価の扱いについては、いろいろな解釈もできますので、ここで書いてあることで何かあってもクレームしないでくださいね。笑)

 

(完成工事原価報告書の見本)

完成工事原価報告書見本

 

材料費

工事に使う材料です。

 

これは比較的簡単ですね。
基本的には税理士が作った決算書の中にある原価報告書の「材料費」をそのまま持ってくれば良いかと思います。
但し、原価報告書に載せるべき数字は当期中の完成工事について純粋にかかった原価の額なので、必ずしも「当期中に材料費として支出した額=当期の材料費」とは限りません。

前期末で100万円の材料を在庫として持っていた場合で、
「それを全部当期の完成工事に使いました。当期の材料はそれだけでした。従って、前期末で持っていた在庫で賄えたので、当期に材料費として新たに支出することはありませんでした!」
となったら、当期の材料費支出はゼロですが、原価(材料)としては100万円になります。

 

 

労務費

現場で建設作業をしている作業員の給料、賃金、手当などがここに当てはまります。

 

簿記の種類によっては法定福利費や退職給付費用、管理者等の給料なども労務費に含めることがありますが、 建設業会計ではそれらは経費に含めます。
従って建設業では、より範囲が限定されているイメージで、一応は「工事にかかった労働力のみを労務費とする」のが一般的なようです。

 

もっとざっくり言うと、工事を実際に施工する自社の職人や作業員の給料というイメージでだいたい合ってます。
一方で、現場代理人や現場事務所の事務員の給料は「工事現場には関わっているけど工事の施工を主にやっているわけではない」ので労務費には含まず、それらは経費に分類しましょう。

 

この理屈であれば、例えば一人親方の株式会社であって、代表取締役が「経営面はもちろん、職人として施工もやるよ!」という場合、決算報告書ではおそらく役員報酬として一本にされているところを工事施工の割合の分だけこの「労務費」に振り分けてあげないとおかしいということになりますし、当事務所はそうしています。

その社長の全労働時間のうち、8割は職人としてやっていて、それで役員報酬が1,000万円であれば、800万円を労務費、残る200万円はそのまま一般管理費の役員報酬に残す、という感じでしょうかね。

 

 

労務外注費について

労務費のところには「うち労務外注費」という項目がカッコ書きで用意されています。
これは何なのでしょうか。

 

基本的には、他社に外注に出した工事は、次の「外注費」に区分することになります。

但し、外注とは言っても実際には材料費などをこちらで負担し、単に工事作業だけをやってもらう場合などは、この労務費に含めることができ、そういった他業者に属する人の労務費を、この労務外注費に計上するという仕組みとお考えください。

また、外注というより、単に「他社から応援などを頼んだ」場合もここ含めて良いと思われます。

あまり迷うようであれば、以下のとおりざっくり考えて直感で決めてください。

  1. 工事を施工する人が自社の人であれば労務費で確定。他社の人であれば労務外注費か外注費。
  2. 材料や道具の全てを他社の人に用意してもらうのであればそれは完全に請負契約なので外注費。それ以外は労務外注費。

そもそも紛らわしい項目であり、都道府県庁の担当者ですら「労務費(労務外注費)でも外注費でもどっちでもいいよ、好きな方で。」という扱いがされることもあります。

 

外注費

下請けに出すなど、外注した場合の費用(労務だけでなく、材料の購入なども含めて契約した額)です。
「材料や道具も全部君たち(下請け業者)でよろしく!」という場合は完全に外注費というわけです。

ちなみに、税理士作成の決算報告書からそのまま数字を拾ってこようとすると、この外注費が完成工事原価の大半を占めることになるかと思います。

ただ、あまりこの外注費だけが大きいと自社施工能力無しとみなされたり、丸投げが疑われることもありますので注意です。
自社の人員で本当は工事の施工をやっているのに、その給料が全て一般管理費の給与手当に仕訳されている場合は、そこからおおよその割合をヒアリングして、原価における労務費に振り分けてあげましょう。

前述のとおり、一見すると外注であっても労務費と実質的に同じ内容のものは 労務費とすることもできます。
「材料は元請が支給するけど工事は請け負ってね」という場合、外注費でも労務外注費でもどっちでも良いです。

 

経費

上記の3つに含まれない原価はここに分類されます。

重機等の使用料、工事現場の光熱費、現場代理人の給料、現場事務所の事務員の給料、 保険料、警備費などなど多数あります。
ここでも、本来この原価の経費に含めなければならないものが一般管理費に仕訳されていることは多いです。

例えば、工事のために現場に行き、近隣のコインパーキングを利用した費用は「交通費」でもこの原価経費に含めるべきです。
一方、工事に絡まない業務でコインPを利用した分については一般管理費の「交通費」です。

税理士作成の決算報告書ではいずれも一般管理費の交通費に仕訳されていることが多いように思います。
厳密には、そこから工事に関して支出した費用を抜いて原価に移し替える必要があります。

 

うち人件費について

経費のうち法定福利費、給料などは 人件費として内書することになっています。
この経費の「うち人件費」が計上されていない場合は、つまり、本来義務である現場への配置技術者も置いておらず、極端な話、「自社の人員は工事に関わってません!」という宣言をしているに等しいので一括下請けを疑われることになります。

自社が請負工事に日々携わっていることを示すためにも、職人さんの給料は「労務費」、現場監督、配置技術者の給料は「経費うち人件費」と覚えておいてしっかりと計上しましょう。

 

ちなみにですが、上記のとおり工事作業(職人)の人件費は労務費に入れるのが筋ですが、例えば埼玉県庁などは、常勤の社員が作業した工事の人件費は、労務費でも経費でもどっちでも良いとのことでした。今さらこう書くのも混乱しますが、それだけなあなあってことなんでしょうか…。または県庁の職員もいまいち把握してない…?

 

さて、ここまで読んだあなたへのまとめ

ここまで読まれたとしても、ほとんどの方は「やっぱりよく分からないなあ」という印象を持ったかと思います。

本当に分からないんです、これ。

 

あらかじめ、税理士の先生などの建設業会計の仕組みをお伝えしておいて、それに基づいて仕訳してくれればおそらく簡単なんです。

 

でも、税理士作成の決算報告をそのまま使えたなんていう話は個人的に聞いたこともありません。
当事務所の経験としても1件もありません。
大企業でない限り、そうそう細かく原価を仕訳する必要もないのでしょう。

 

それでも正確に完成工事原価報告書を作成したければ、総勘定元帳を洗い出して、決算報告書の一般管理費の数字を見ながら「このうちこれくらいは原価に振り分けなおすか」・・・などやるのが本来なのでしょうが、現実的に不可能です。

 

従って、ある程度概算、パーセントで計上していくしかありません。

 

許可の審査担当者もそのへんはわかっているはずで、基本的には工事原価の合計額が損益計算書と合致しているのであれば、さほどうるさく言われないと思います。

 

多少歪んでいる書類ということになりますが、あまり深く考えすぎて許可申請ができなくならないよう、ある程度諦めをつけて進めていくしかないのが現状だ、と当事務所は考えています。







-許可申請小ネタ

Copyright© 建設業許可を取りたいときは│東京都小平市のこだたま行政書士事務所 , 2019 All Rights Reserved.